バリ島のシュタイナー教育
- Takahashi Reina
- 4月17日
- 読了時間: 8分
子どもと「ほんとうの学び」を取り戻す旅
― Sun School Bali と Madu Waldorf から考える親子留学の可能性 ―
「学び」って、なんだろう?
子どもが学校に行きたがらない。勉強を嫌がる。そんな時、「このままでいいのかな」と不安になる親御さんも多いと思います。
でももしかしたら、それは子どもなりの“本能的なサイン”なのかもしれません。
「それ、本当に学びたいことじゃないよ」「もっと大切なことがあるよ」
そんな声が聞こえてきそうな気がしたら、ぜひ一度立ち止まって、“学びの意味”を見つめ直してみてください。

バリ島に広がる「もうひとつの学び方」
観光地として知られるバリ島。でも、近年は世界中から“本質的な教育”を求める家族が集まっています。
その背景にあるのが、自然と共にある暮らし、心と身体の調和、そして自分らしく生きる力を育てる教育への関心です。
バリでもシュタイナー教育(Waldorf Education)を取り入れた学校があります。先日、 Sun School Bali と Madu Waldorfを訪れる機会があったのでここでシェアをしたいと思います。
シュタイナー教育とは?
シュタイナー教育は、オーストリアの思想家ルドルフ・シュタイナーが提唱した教育哲学で、「人間が本来持っている可能性を、頭・心・身体すべてを使って育てる」ことを大切にしています。
シュタイナー教育の特徴
テストや点数による評価ではなく、子どもの内面の成長を見守る
自然、音楽、芸術、手仕事など五感を使った体験的な学びが中心
年齢ごとの発達段階に合ったカリキュラムで、**“急がせない教育”**を重視
デジタルではなく手作業・人とのつながりを大切にする
「子どもは未完成な存在ではなく、最初から“完全な魂”としてここにいる」― 教師は“教える人”ではなく、“ともに育つ伴走者”という考え方です。
グリーンスクールとどう違うの?
バリで有名なオルタナティブスクールといえばGreen Schoolですが、シュタイナー教育を取り入れた学校とでは、学び方・思想に明確な違いがあります。
比較項目 | シュタイナー教育(例:Sun / Madu) | グリーンスクール |
教育哲学 | ルドルフ・シュタイナーによる人智学に基づく | 環境教育 × 起業家精神(Green Leadership) |
テクノロジー | デジタル制限/基本的に使わない | 小学高学年からデジタルも導入される |
学びのスタイル | 自然素材・手仕事・リズム・芸術中心 | プロジェクト型学習(SDGs・起業など) |
評価 | 評価なし/観察と記述によるフィードバック | プロジェクト成果やプレゼンテーション |
コミュニティ | 小規模・深いつながり/親の関わりも強い | 多国籍・広範なネットワーク型 |
雰囲気 | 静かであたたかい/感性を育てる | エネルギッシュで挑戦的 |
✔︎ シュタイナー教育=「内側を育てる学び」✔︎ グリーンスクール=「社会へ向けた実践力の学び」
どちらが優れているというより、子どもと家庭に合う環境を選ぶことが何より大切です。
モンテッソーリ教育とも違うの?
モンテッソーリ教育も「子ども中心の教育」として知られていますが、シュタイナー教育とはまた違った視点を持っています。
比較項目 | シュタイナー教育 | モンテッソーリ教育 |
教育哲学 | 芸術的・精神的アプローチ(魂の成長) | 科学的・観察的アプローチ(秩序・自立) |
環境 | あたたかく装飾的/季節や色を大切に | シンプルで整然/自主性を促す道具が中心 |
教師の役割 | 導く人・見守る人 | 観察者・環境を整える人 |
学び方 | 空想・物語・表現・創造を重視 | 実践・生活・感覚を通した具体的学び |
年齢別区分 | 7年周期のリズム | 年齢・発達段階ごとの混合クラス |
✔︎ モンテッソーリ=「秩序と自律」✔︎ シュタイナー=「創造と内的成長」
どちらも“子どもを尊重する教育”ですが、アプローチが違います。
🌞 Sun School Bali

「魂が目を覚ますような、静かで力強い時間」
ウブド郊外の森に囲まれた場所にあるSun School。道路からは見えにくく、まるで“秘密の庭”のような学校です。
特徴
シュタイナー教育をベースにしながらも、現地文化や子どもたちの多様性に柔軟に対応
2歳〜12歳までのプレイグループ、キンダー、プライマリーのクラス編成
英語中心の授業ながら、非ネイティブの受け入れにも慣れている
教育内容
朝の“サークルタイム”で詩・歌・ダンスを通じた心のウォーミングアップ
曜日ごとにテーマの異なる手仕事(例:水曜=絵画、木曜=編み物)
工作、農作業、自然遊びなどを通して“手から学ぶ”
年齢ごとに物語や季節のリズムを取り入れたエポック教育
校舎と雰囲気
バンブーと粘土でできた手作りの教室
草の香りがする校庭と、泥遊びが許された自由な空間
大人も裸足になりたくなるような温かさ
保護者の声
「息子が“学校に行きたい”って言ったの、初めてです」「何も“教えられていない”ように見えるのに、帰ってくると心が満たされている」「ここに来て、“学び=安心できるもの”になりました」
🎤 インタビュー|Sun School Bali 校長 Ms. Anna
「知識ではなく、“自分自身”とつながる力を育てたい」
バリ・ウブドの森の奥。まるで物語の世界のような学校、Sun School Bali。今回は校長であり、創設者のMs. Annaに、教育への想いを伺いました。
Q1:なぜ、Sun Schoolを始めたのですか?
Anna:子どもたちを見ていて、どこか“生き急いでいる”ように感じていました。「もっと早く読めるように」「もっと成績を」「もっと社会に通用する子に」と大人が焦るほど、子どもたちの“今ここ”が消えていってしまうような…。 この学校は、「学ぶって、そもそも楽しいことだったよね?」という原点に戻りたくて始めたんです。
Q2:Sun Schoolの教育にはどんな特徴がありますか?
Anna:私たちはシュタイナー教育をベースにしていますが、完全なコピーではありません。 子どもたちはそれぞれ違うリズムを持っていて、その子自身のタイミングがあります。だから私たちは、教える前に「聴く」。評価する前に「観る」。 芸術や自然、物語を通じて、自分自身の“感覚”を信じる力を育てることを大切にしています。
Q3:バリ島という場所で教育をする意味は?
Anna:バリは、“目に見えないもの”を信じる文化がありますよね。自然や神様、祖先、空気の流れやエネルギーまで…。 それが教育にもすごく大きいんです。知識よりも、「どう感じた?」という問いが子どもにとって重要になる。 あと、大人が完璧じゃないことを隠さない文化も好きです。私も失敗するし、怒るし、泣きます(笑)。でもそれを見せることで、子どもたちも「人間でいいんだ」って思えるんじゃないかな。
Q4:印象に残っている生徒とのエピソードはありますか?
Anna:以前、ある7歳の男の子が「ぼくはバカだから学校キライ」と泣きながら来たんです。 でもここで粘土や木工、畑作業を通して、自分の“得意”に気づき始めた。 数ヶ月後、「ぼく、“つくる人”なんだね」って、満面の笑みで言ってくれたんです。 彼は、読み書きより先に“自分の価値”を知りました。私にとって、それが何よりの“学力”です。
Q5:日本のご家庭へのメッセージをお願いします。
Anna:お子さんが「学校に行きたくない」「勉強がイヤ」と言ったら、それは“ダメなサイン”じゃなく、“扉のサイン”かもしれません。 何かが終わって、何かが始まる前兆。 そんなときは、ちょっと環境を変えてみるのも一つの選択です。バリという自然の中で、ただ遊び、笑い、感じる。 それだけで子どもは、本来の力を取り戻していくと私は信じています。
編集後記
Ms. Annaの言葉には、どこか懐かしさと安心感がありました。「学ぶって、こんなにシンプルだったんだ」と思い出させてくれるような時間でした。
🍯 Madu Waldorf

「やさしさで包まれた、小さな世界」
「Madu」とはインドネシア語で「はちみつ」。その名の通り、あたたかく、まろやかで、甘い空気に包まれた場所です。
特徴
幼児〜小学校低学年までを対象とした小規模で丁寧なシュタイナー教育施設
ローカルと外国人が混ざり合い、非常に多文化的なコミュニティ
親も参加する形式が多く、家族全体での学びを重視
教育内容
おやつ作り、庭いじり、縫い物、絵本読み聞かせ、バリ舞踊など日常のすべてが学び
四季ではなく**“バリの自然のリズム”に寄り添った季節教育**
デジタル機器は一切使用せず、素朴な素材と手作業にこだわる
スローな時間設計で、遊びと休息、学びのバランスが絶妙
校舎と雰囲気
木や草でできたローカル建築のような教室
お香や花飾りがさりげなく置かれ、“神聖さ”と“暮らし”が共存
絵本に出てくるような“季節のテーブル”が毎日子どもたちを迎えてくれる
保護者の声
「子どもが学校から帰りたがらないのは、ここが初めてです」「“学力”では測れない何かが、確実に育っていると感じます」「親の私も癒される場所。ここで一緒に育っている感じがします」
どちらを選ぶべき?
比較項目 | Sun School Bali | Madu Waldorf |
年齢層 | 2歳〜12歳まで | 主に幼児〜低学年向け |
教室の広さ・設備 | 広め/運動やアート活動も可能 | 小規模/家庭的で落ち着いた雰囲気 |
学びの方向性 | より“学校”らしいシュタイナー教育 | より“ホーム”のような親密さ |
親の関わり度 | 授業は任せて見守るタイプ | 親の参加型・共同体として関与する形 |
雰囲気 | 活動的で開かれた印象 | 静かで繊細、ぬくもり重視 |
入学しやすさ | 空きがあれば短期体験も可能 | 要事前連絡/タイミングによって要相談 |
どちらの学校にも共通するのは、「子どもは、何かを詰め込まれる存在ではなく、すでに価値のある“ひとりの人間”として尊重されている」という姿勢。
それが、バリの自然とつながったこの土地で、静かに、でも確かに花開いているのです。
次のステップへ
もしあなたやお子さんが、「ちょっと疲れているな…」と感じているなら、それは“学び方”を変えるタイミングかもしれません。
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